実家暮らしの手帖

食う寝る遊ぶに住むところの機微を綴るブログ

便利×便利=不便?

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お揃いのマグカップとお料理の本


数年前、地域で唯一デパートのある街の店舗が軒並み撤退して、ちょっとしたよそゆき用のお買い物をしたり、あてもなくウインドウショッピングを楽しむ機会がほとんど無くなってしまった。日々の暮らしの実用を足すに困るわけではない。大型ショッピングモールや衣料品、電化製品などの量販店はいくらでもあるし、チェーン展開の外食店舗は今やどの街にも同じ顔で並んでる。

それでも時折ふと、不便とは言えない不便さを感じるのはそうした実用的なお買い物に純粋な娯楽の要素がいまいち足りないせいかなと思う。

デパートのフロアをあてもなくぶらつき、自宅使いにはとうてい似つかわしくない高級食器のディスプレイを愛でるとか、手の届かない値札の付いた宝飾品にうっとりするとか、たまには全く予定外の衝動買いの罠にはまるとか、そういう無駄といえば無駄な消費行動を心地よく促す時間と場所が、すぐに行ける距離に減ってしまったのはとても寂しい。

 

このたび1週間ほどかけて、知人に贈るプチギフトを用意した。

近くに適当な実店舗がなくても、今ならネットでいくらでも手頃なものが手に入る。むしろ有り余る選択肢の多さににかえって困るくらいだ。配送料が別途かかる要件の多いのはちょっとアレだけど、まあ、便利と言えばとても便利なシステムである。

思う存分ネットサーフィンして気に入った商品を選び、2〜3日待つと自宅まで商品がきちんと届く。首都圏から大きく外れた地域在住なので、この辺りの便利さは多少減点されるが、とりあえず欲しいものの情報とその入手手段はどこに住んでいようと平等に享受できる世の中を、便利と呼ぶなら確かにその通りなのだろう。

今回も某大手ショッピングサイト経由で選んだいくつかの商品を宅配便のお兄さんがきちんと自宅まで届けてくれて、あとはプレゼント用にラッピングするだけの運びとなった(ギフト用ラッピングサービスが無かった)。

もちろん私にはラッピングの技術も知識もない。しかし心配は無用。すぐにネット動画でラッピングの実演をにわか勉強する。100均ショップで買ってきた包装紙やらリボンやらを使って、素人でもそこそこの仕上がりに見せることもそう難しいことではない。手作業の好きな女の子たちにとって、こういう過程もプレゼントを贈る楽しみの一つといえば確かにそうかもしれない。

 

しかしながら私は先ほどからなんとなくもやもやした心の内側をじっと見つめている。便利って一体なんなんだろうと。

見てるだけでワクワクするような商品が並ぶ実店舗を失い、五感で商品を選ぶ機会が極端に減り、いくら簡単とはいえラッピングを自前でこなす現代のお買い物事情。

ここまでの過程に費やす時間と手間を勘案して、果たして以前より世の中の便利は進歩したのか否か、私にはもうわからない。

通信技術や流通ルートの飛躍的な進歩はいうまでもない。しかし進歩と便利さの度合いは必ずしも正比例ではないのかもしれないとも思う。

ちょっとしたプチギフトのおかげで、便利と便利を掛け合わせて不便ができる可能性も無きにしも非ずということを、いま一度よく検討する必要性を感じた午後のひと時であった。