霜月の 朔何か ありさうで
(佐藤鬼房)※朔(=ついたち)
霜月朔日、目覚めた途端もう寒い。昨日までかろうじて晩秋を演じていた役者たちが月末をもってこれにて楽日とばかりに衣装を脱いであっさり舞台を去った後みたいに粛々と寒い。
確実に湿度を減らした冷たい雨が窓の景色を烟らせる。ビジュアルからしていかにも寒い。
生粋の北国育ちだが寒さにはめっぽう弱い。何しろここは幾重もの断熱材でがちがちに守られた要塞の、ぬくぬくに暖房の効いた部屋の中でハーフパンツにTシャツというハッピーな南国スタイルで食後にアイスクリームを食べるというのが文化的コレクトネスとされる地域だ(嘘)。
寒い冗談はさておき、今日は朔日。今月も気持ち新たに、ほどほどに満ちた時間をたくさん過ごせますように。
さてウェルカム冬将軍の覚悟も渋々決まったところでそろそろごはんの支度です。
今夜のメニューは「真冬にアイス」のギャップを愛する郷土精神に則り、父母が出先で買ってきた「平目・鮪・帆立」の3点盛りで「超内陸で海の幸」と、疲労回復成分イミダゾールジペプチドたっぷりの鶏むね肉をサクサクのカツにして、飛べそうで飛べないニワトリさながらの臆病な自分に喝を入れます。
ちなみに私の父はこういう「肉は肉・魚は魚」のわかりやすいメニューをとても喜ぶいとも単純な童子のような男です。