午後、危なっかしい晴れ間がときおり顔を覗かせるなか、食後に果物の欠かせない父の誘いで両親が連れ立って家から往復3時間もかかる古譚の山奥にある秘境の果樹園までドライブがてら出かけて行き、留守番を任された長女の心配をよそに元気いっぱいで帰還して、あれよあれよと甘酸っぱい香りと満足げな父の気配が玄関じゅうに立ち込めた今日の夕暮れ。
「林檎」
時に愛や幸福の象徴とされ、一方で誘惑や後悔の象徴とされる魅惑的な果実。
自分にとって大切なものが明確になるに従って、不安の影もはっきり見えてくる。
時の流れと共に積み重なって行く幸せのかたちと表裏一体にある深い悲しみ。
最近、危なっかしい晴れ間の覗く秋空に、以前より親しみを覚えるようになったせっかちな私の心が見据えているのは、真冬へと進まざるを得ない諦観をそれでも超えようとする自分なりの強い覚悟かもしれない。
明日から天気は本格的な下り坂。さあ来い、今年の冬将軍。