実家暮らしの手帖

食う寝る遊ぶに住むところの機微を綴るブログ

essay

月曜は阿修羅の如く

パーソナルエリアの広いマイペースな生活に慣れすぎて、たまに人口密度の濃い賑やかな街に来ると、滅多に作動しない神経が刺激されて、通り行くすべての道筋から絶え間なく五感に飛び込んでくる情報量の多さにそわそわワクワクから始まってぐったりで終わる…

旅する魔性の女

非日常の生まれるところ 今回の旅の主な目的は「プッチーニが描く女たち」と題されたオペラアリアのソプラノリサイタルを聴くこと。 サブテーマが「恋に生きる魔性の女を歌う」ということで、なんだか自分の日常に最も遠いところにありそうな異世界の、新鮮…

旅に短し散歩に長し

こんばんは、ぐりです。 明日から旅行というにはあまりに手近な主要都市まで遠足以上旅行未満のおのぼり小旅行に出かけます。 旅に短し散歩に長し。とはいえ平素よりフットワークの重い人間にとって、泊まりがけの外出は遠足前日の小学生なみに気持ちをソワ…

諸行無常の変幻デコレーション

午前中、微かな陽射しに意を決した両親が揃って庭仕事に精を出す。多年草の草花や庭木がそれぞれ安全に冬を越すための雪囲いを不器用な共同作業でしつらえていく。1時間ごとに暖を取るため家に戻って甘酒やホットミルクを飲んでいく。 お昼前に作業を終え、…

家路を惑わす「嫌よ嫌よも好きのうち 」

初雪 白雪 粉雪 小雪。 この音の響きのうつくしさよ。いかにも透明で清純な文字の形よ。 今朝の初雪にまるまる好きに弄ばれた感のある1日が終わり、寒い寒いと言いながら出先からの帰り道、移動中なんども車を降りては真新しい景色にカメラを向けてほうっと…

甘酸っぱい女王の風格と憂鬱

午後、危なっかしい晴れ間がときおり顔を覗かせるなか、食後に果物の欠かせない父の誘いで両親が連れ立って家から往復3時間もかかる古譚の山奥にある秘境の果樹園までドライブがてら出かけて行き、留守番を任された長女の心配をよそに元気いっぱいで帰還して…

侘び寂びの女たち

コーラス本番当日。 朝、いつも通りのルーティンをこなし、いざ会場へ。相変わらず優柔不断な空模様だが思ったより気温は高く穏やかな風の通りが心地よい。 まぐれ当たりのルーレットみたいな晴れ間が辺りを一瞬をかすめて、常緑樹と紅葉のコントラストが寂…

エイジレスなMy Favorite Things

When the dog bites 犬に噛まれたり When the bee stings 蜂に刺されたり When I'm feeling sad 悲しくなったりすると I simply remember my favorite things ただお気に入りのものを思い浮かべるの And then I don't feel so bad それで気分はずいぶん良く…

ちいさな秋にさよならを

午前中、町民文化祭に参加する女性コーラスの舞台リハーサルが無事終了。昨夜の甘い作戦が功を奏し、すんでのところで風邪っぴきを免れた。 20年前、母が音楽好きの仲間と一緒に作った女性だけの小さな合唱団。今では平均年齢が軽く70歳を超えたこのサークル…

甘さで攻めるぐりの兵法これ如何に。

手作り甘酒ときのとや「森の忘れもの」 朝から小刻みに変わる情緒不安定な空模様に振り回されて、大荷物が予想される買い物に出かけるか否かぐずぐず迷っているうちに、迷い無き時計の針はぐるぐると回り続けあっという間に正午過ぎ。もはや機を逸したなと私…

文明のぬるい水、灯油ボイラー死す

経年変化・・・年月が経つ内に製品の品質・性能が変化すること。特に摩耗・腐食などで性能が劣化すること。また時間の経過とともに住居が損耗すること。 出典:デジタル大辞林(小学館) こんにちは、薄氷の便利にまんまと踊らされている現代人ぐりです。 突…

尊敬する準備はできている

小さなおかず〜小松菜とゆで卵の煮浸し 10月28日(月) 本日のメニュー ・五目寿司 ・ニシンの※かまくら焼き ・小松菜とゆで卵の煮浸し ・大根なます ※かまくら焼き・・・魚を醤油、お酒、みりんを合わせた甘辛いタレに一晩漬け込んで焼いたもの。地元で…

こんな小春日和の穏やかな日は

久しぶりに両親と休日ドライブ。 菊日和の晴天のなか、広い広い平原をどこまでも東に駆け抜けて、辿り着いたは大きな通り沿いの森の一画に佇む某美術館。ここで開催中の北斎展を観賞するのが本日の主な目的。 遠くの街で忘れかけてた「ひとやすみ」に出遭う…

激辛エスカレーション、もう何も辛くない。

辛いは「からい」のほうです。もともと何も「つら」くはありません。 こんにちは、もはや違いの分からなくなってしまった女ぐりです。 今日は家族にすら公にしていない私の秘密の修行について、気づけば読者さん174人(26日15:00現在)という思いがけない喜…

腹が決まるとき

「今日は食べすぎちゃったな。よし、明日から本気でダイエットだ!」とか「うわ。朝からめっちゃ気持ち悪い。もう二度と酒なんかのまないぞ」とか、 「んもう。こんなダメ男、今度こそ絶対に別れてやるっ」とか 思ってる人も思わない人もこんにちは。意志薄…

緩やかに下降する私の右耳

先日、行きつけの眼鏡屋さんから連絡がありオーダーしていた商品が届いたとのこと。ついては実際に装着してフィッティングをしたいので手隙の時間によろしくご来店いただきたいとの旨。翌朝さっそく受け取りに向かう。 ちょうど1週間前、詳細な視力検査の末…

汚れちまいたい純情に

こんにちは、ぐりです。 昨日まで実家の上空に広く居着いていた執拗な雨雲が去り、朝からすっきりとした青空が紅葉の進む晩秋の木々に清澄な明るさを添えています。 小学生の頃、雨の日や寒い時期には、子どもたちは昼休みや放課後にみんなで体育館に集まっ…

プロフェッショナルな野暮と洗練〜『六花亭』の甘味たち

冷たい雨の降りしきる中、午後から父の囲碁仲間が来るというのでお茶請けに六花亭の季節菓子「新米大福」を用意して待つ。 こんなアンニュイな気分を誘う日には家にこもって静かに晴耕雨読と行きたいところだが、毎日のおうちごはんを預かる身にとって、週末…

こんにちは、ぐりです

チョコレートの海で泳ぎたい妹と、米つぶのビーチに寝そべりたい私。 チーズケーキの枕に顔を埋めて眠りたい妹と、焼き鮭の抱き枕にすがって眠ってみたい私。 日曜の朝はパンケーキの妹と、白いごはんに安息日なんてない私。 食後のスイーツは別腹の妹と、シ…

「かもしれない思考」のススメ

こんにちは、ぐりです。 タイトルに「ススメ」とありますが、諭吉先生の啓発的「ススメ」のような立派なススメではなく、正確には『「かもしれない思考」の(まま)ススメ!』という、自身を鼓舞する応援歌のつもりで書きました。強いて言えば「およげたいやき…

私の右目はシャイ(斜位)なのだそうです。

連休最後の午後、最近めっきり目が悪くなったような気がして、久しぶりに行きつけのメガネ屋さんで視力を測ってもらうと、いつも人当たりのよい話上手の店員さんに「あなたは典型的なシャイですね。」と言われた。 唐突に図星を突かれ驚いた私は思わず「どう…

着たい服・着るべき服・着てはいけない服

四十にして惑わずなんて、そんなのとても無理だ。 小さい頃からよく迷子になる子どもだった。40を超えて久しい私は、ゆく川の流れの絶えずして、昨シーズンまではたしかに素敵に着こなせていたはずのスカートがある日突然似合わなくなるといった、あまたの…

好奇心は羽ばたかない

生まれつきの持病があり病院とは切っても切れない間柄にある。 私の身体はどうやら10年スパンで大掛かりなメンテナンスが必要らしく、ポピュラーな風邪など普段はあまりこじらせない代わりに、いったん不調の周期に襲われるとマーヴェリック級のどデカい波に…

楽譜が読めない女、暗譜ができない女

同じ屋根の下に楽譜が読めない女と暗譜のできない女が住んでいる。 ピアノを習い始めて2年ほど経つ。と言っても全くの初心者というわけではなく、幼少時代、小学校に上がるまでのわずかな期間母に連れられて自宅から車で40分かかる先生の自宅まで毎週レッ…

新米ラプソディ2019

9月某日 雨上がりの午後、平たい盆地の真ん中を一直線に伸びる長い道路の脇に広がる、黄金色に染まった稲穂の群生が一斉に頭をもたげて風にそよぐのをフロントガラス越しに眺めながらのんびりと車を走らせる。 豊穣の秋ハズカム。新米カミングスーン。 もと…