実家暮らしの手帖

食う寝る遊ぶに住むところの機微を綴るブログ

私の右目はシャイ(斜位)なのだそうです。

連休最後の午後、最近めっきり目が悪くなったような気がして、久しぶりに行きつけのメガネ屋さんで視力を測ってもらうと、いつも人当たりのよい話上手の店員さんに「あなたは典型的なシャイですね。」と言われた。

唐突に図星を突かれ驚いた私は思わず「どうしてわかるんですか?」と尋ねると、彼の返事は「実は僕も同じタイプなのでよくわかりますよ」と。彼は最近この支店の店長に昇進した。

以前から仕事のできる人だなあと思ってはいたけど、見かけによらず恥ずかしがりなんだ。それにしてもこの人、視力検査で性格まで見抜くことができるのか…店長おそるべしと一瞬信じそうになったけど、待てよそんなことあるわけないとよくよく話を聞けば、私の右目は視線を中央に寄せる筋肉が弱い「外斜位」という、わりと珍しいタイプの目なのだそうだ。

斜位の不思議な見え方をうまく説明できるか自信はないけど、例えばこう、小さなふし穴に両目を当てて対象物を覗き見している状況で、次に斜位のある右目だけで覗き直すと、そこに見えているはずの対象物がきれいさっぱり消えているというおかしな現象が起きます。

実際やってみると、ほんと訳が分からなくて気味が悪いほど実に見事に消えてしまうのだ。再び両目に戻して見てみると、ホシは逃げずにちゃんとそこにいる。

試しに左目だけで覗いてみるとやはり居る。この犯人は、どうやら右目だけには絶対に捕まえられない、キャッチミーイフユーキャン。

物を見るという身体の仕組みについて店長の説明を聞き私が理解したのは、人は普通ものを見るとき、左右それぞれのカメラから対象物に焦点を当てて写真を撮り、その映像を脳に送ります。で、何処にあるかは知らないけど脳の中の視覚を担当する部位で目から送られてきた映像をこう、何かいろいろアレして、ひとつの立体映像として自分自身に認識させていると、つまりこういうことらしい。たぶんそんな感じでほぼほぼ合ってると思う。

で、対象物に焦点を合わせるためには、目玉を左右前後に動かす筋肉を使うのだが、私の場合、もともと右目の目玉を内側に寄せる筋力が弱く、少し焦点が外側にズレる癖があるらしい。

だから両目でものを見る時には、清く正しい左目に合わせて焦点がしっかり内側に近づくよう、ぐぐっと筋肉に力を込める必要があり、ありのままではいられない無理な力を要するぶん、非常に目が疲れやすくなったり、肩や首筋がいつもごりごりに凝っていたり、慢性的な偏頭痛を厄介な運命として抱え込んだりもする。

思えば左目よりもたくさん頑張って働いているのに、右目にとってこんな割の合わない話はない。

私は自分の右目が急に愛しく尊いものに思えてきた。

そこで、これまで苦労をかけてきたせめてもの償いと恩返しに、自力を優しくサポートし、かけているだけで自然に視界を矯正してくれる高級なプリズムレンズの入ったメガネを2本作ることにした。

ひとつはパソコン作業とピアノと読書のために使う、近〜中距離使用のメガネ。もうひとつは運転時や普段の生活に日常的に使えるもの。 

連休最後の駆け込みに、フレームと合わせて計10万円弱のお買い物。キャッシュレス決済で5%還元。手元に届くのはおよそ1週間後とのこと。

40年以上、過酷な自主トレに黙って耐えたシャイでクールでタフな右目がついに開眼し、左目と熱くタッグを組んで新しい世界を踏み出す瞬間が今からとても楽しみだ。