実家暮らしの手帖

食う寝る遊ぶに住むところの機微を綴るブログ

「いいもの」

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ヒレ肉の味噌漬け焼き&きのこソテー

こんにちは、ぐりです。


正午過ぎ、本州の最南端に住む妹と久しぶり(といっても1週間くらい)に長電話をする。彼女は結婚後ずっと専業主婦をしているが、いつもおうちの中で森の梢の小鳥のようにくるくると忙しい。時々疲れて目が回り、ばったり寝込んだりもする。旦那さんの仕事の都合で数年ごとの渡り鳥だが、どこにいても夏と冬には日本最北の実家まで遠路はるばる羽を広げて帰巣する。

今日もまた、そう遠くない将来にたぶん引越しをするというので、早めに始めた荷物の仕分けと算段にここ数日かかりきりでどっと疲れたとのこと。おそらくその時間の大半は彼女専用のクローゼットに過積載されている四季折々の衣装の整理に費やされていると思うが、毎日の家事の合間に2歳半の姪っ子と一緒に家じゅうの道具を出したり引いたり、途方にくれたり断捨離したり、ああでもないこうでもないとパタパタ立ち回っている様子を聞くと、それはそれで何だか楽しそうだ。

彼女の結婚が決まった時、私はこれで自分の人生経験が2倍に膨らんだような気がしてとても嬉しかった。ややもすると姉妹二人で力を合わせて生きていこうね、なんてことも真面目な顔で話し合うほど私以上に男の人の影の薄い娘だったので、私とは別の道を歩くことで、私が直接体験できない風景もこれからは彼女の目を通してたくさん知ることができると思うとホッとすると同時に嬉しくてわくわくした。お相手の旦那さんもすごく良かったし、実際姪っ子が産まれてからは、なんてことのない日々の営みがますます面白く見えてきた。私が両親との実家暮らしにもっとじっくり関わろうと考えるようになったのは、間違いなく妹の結婚がきっかけだったと思う。

今はいろいろな価値観があり、多くの場合それぞれの自由意思、あるいは成り行きで人生の在り方を決めることも可能だと思うが、私は今でも結婚っていいな、いいものだなと思う。そう思えないケースも多々あることは重々承知の上で、それでもなおかつ、自分以外の誰かの体験を自分ごとのようにシェアできる相手と一緒に、変わり映えのしない日々を創造することは、喜びにつけ悲しみにつけやはり「いいもの」だと思うのである。両親と妹夫婦の道のりをリアルタイムでバーチャル体験しながら、私はその思いがどんどん深まるのを感じるのである。

 

最近ずいぶん言葉がしっかりしてきた姪っ子が電話口で私の名を呼ぶ。

それだけでキュン死しそうになるほど私は姪っ子にメロメロで、どこから見ても完璧なおば馬鹿なのだが、私はそのことに誇りすら覚える。せっかくだからどこまでも誇り高き宇宙一のおば馬鹿になろう。

と、隣を見れば宇宙一の祖父馬鹿と祖母馬鹿が揃って相好崩して交代で姪っ子と話している。

私はそんな二人の様子を眺めながら、ぼちぼち夕食の支度に取り掛かるのであった。